「家紋」を知る
紋付袴や黒紋付と呼ばれる着物の「紋付」の「紋」って
何のためについているか、あまり知られていないので、
ここで、ご紹介します。
【家紋のはじまり】
家紋は平安時代の貴族たちが乗った牛車(御所車=ごしょぐるま)に、
それぞれ自分の牛車がどれか分かるように目印となる家紋を
つけたことにはじまると記されています。
現在でいうとナンバープレートみたいなものだったのでしょう。
【家紋の歴史】
平安時代の家紋は貴族中心に発展していきましたが、鎌倉時代中期以降になると、
武士たちが各自の家紋を持つようになります。
そして、鎌倉時代から室町時代にかけては、戦乱と武家の活躍した時代にふさわしく、
戦場での敵と見方を識別するための武具や武器、それに旗や指物(戦場で目標にする小旗)に
つけるため、家紋は大きくなり、内容も明快な抽象形になります。
それは室町時代を経て桃山時代に受け継がれ、現在の家紋は、さらに時代を下って
江戸時代に至って飛躍的に発展していきました。
---------------代表的な武将の家紋------------
徳川家 豊臣家 織田家
真田家 武田家 上杉家
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【家紋の今】
現在では、歌舞伎の世界や落語の世界くらいでしか家紋を見かけることが少なくなりました。
一般社会では、冠婚葬祭で紋の入った着物を見かけるくらいでしょうか。
あと家紋とは少し違いますが、会社のロゴマークが家紋の役割を担っているといっても
良いかもしれません。
【家紋の役割】
家紋は目印としての役割のほか、紋の数や入れ方、入れる形により
着る人や着る場所での格を表してくれます。
例えば、結婚式では一番格式が高い着物を新郎新婦のご家族が着用するので、
友人・知人の女性は、五つ紋の留袖などは遠慮した方が良いなどがあります。
その紋の数や入り方で、もっとも格式が高いのが、五つ紋の日向染め抜き紋です。
この五つ日向染め抜き紋は、最上の第一礼装ということになります。
◆紋の数
・五つ紋・・・背の中心・右外袖・左外袖・右胸・左胸
黒・色留袖、喪服 例)結婚式ではご両親
・三つ紋・・・背の中心・右外袖・左外袖
色留袖、色無地の着物 例)結婚式ではご姉妹
・一つ紋・・・背の中心
色無地の着物、訪問着、付け下げ、江戸小紋 例)結婚式ではご友人
◆紋の入れ方
・染め抜き紋・・・着物にする前に布地の時点で、紋を白く染め抜く技法。最も格式が高い。
・摺り込み紋・・・あらかじめ紋の外枠型に丸く白抜きした部分に型紙を乗せ、
その上に地色と同じ色の染料を刷毛で乗せて染める作業。
出来上がった着物の地色と色を揃えるのが難しい。
・縫い紋・・・糸を使って紋を表すので刺繍紋ともよばれ、などさまざまな刺繍の技法で
表します。縫い紋は略式の扱いとなり、染め抜き紋ほど格の違いは
ありません。縫い紋を用いる際は3つ紋もしくは1つ紋となり、一般には
1つ紋が好まれているようで色無地や訪問着につけると略礼装の装いと
なります。縫い紋もできあがった着物に後から付けるので、
地色と揃えるのが難しいです。
◆紋の形式
・日向紋・・・布地に白く染め抜き形を全てを表現する紋
・陰紋・・・紋の輪郭だけをかたどって表現する紋
【一般的に使われる通紋】
江戸時代にはいると、華美で装飾的な家紋は武士に限らず、庶民にも利用されたました。
そういった少数の家や個人が独占できなくなった家紋のことを「通紋(つうもん)」といいます。
通紋は、例えば「花菱紋」といった一般的に優美な家紋に多く、「五三の桐」などは
その一般性から貸衣装の紋としてよく使われています。
丸に違い鷹の羽 五三の桐 浅野鷹の羽
【貼り紋】
貸衣裳店さんの留袖は、たいてい「五三の桐」です。
ご自分の家紋を伝えれば、「貼り紋」といってシール状の紋をつけてもらえますので、
ご相談されてみてはいかがでしょうか。